自己愛と自己肯定感。
なんだか似ている言葉ですが、なにが違うのでしょう?
「自己肯定感が高い方がいい」という話をよく耳にすると思います。
一方で、似たような言葉に「自己愛」があります。
これも自分を愛するという意味では自己肯定感と同じ気がしますが、
自己中心的すぎる人のことを「あの人は自己愛だから」と表現する場面に出会ったことはないでしょうか。
自己愛と自己肯定感の特徴を知り、健全な状態を保つバランスを意識することで、心の状態が安定しやすくなりますよ。
自己肯定感と自己愛
自己愛と自己肯定感は、どちらも自己に対する肯定的な感情を表しますが、それぞれ異なる側面を持っています。
まずは、どのようなものか見ていきましょう。
自己肯定感とは?
「自己肯定感」は、自分自身を肯定的に評価し、価値ある存在だと感じることです。
「自分のコトが好き」「自分の存在や行動に自信を持てる」という状態は、自己肯定感が高いと言えます。
たとえば
・自己評価: 他人の意見や評価に過度に依存せず、自分自身の評価基準を持っている。他人と比較するのではなく、自分の成長や努力を認めることができる。
・自分を信じる: 自分の判断や選択に自信を持ち、失敗を恐れずに挑戦する勇気を持つことができる。
・感謝や喜びを見つける: 自分の存在や周りの環境に感謝し、日常の小さな喜びを見つけることができる。
このような状態は、「自己肯定感が高い」状態であるといえるでしょう。
自己肯定感が高い人は、ストレスや困難に対しても前向きに対処でき、より幸福感を持ちやすくなります。
逆に、自己肯定感が低いと、自分に対する不安や不満が強くなり、ネガティブな感情に支配されやすくなってしまいます。
自己愛とは?
では「自己愛」とはどのようなものでしょうか。
「自己愛」は、自分自身を大切にし、自分のことを愛する感情や態度のことです。
これって良いことのような気がするけど・・・。
自己愛って、それ自体は良いものなんです。
ただ、過度な自己愛は人間関係に影響を与えてしまいます。
健全な自己愛
健全な自己愛は、自分を尊重し、自己の幸せや成長を大切にする態度のことを指します。
たとえば
・自分を労わる: 自分の体や心の健康を大切にし、必要なケアを行える。例)適度な休息、バランスの取れた食事、ストレス管理など。
・適切な境界の設定: 自分の限界やニーズを理解し、他者との関係において適切な境界を設定することができる。これにより、自分の時間やエネルギーを守ることができる。
つまり、自分のことを大切にできるし、他者とも適切な距離感を保ってその人らしく生活できるということですね。
過度な自己愛(自己愛性パーソナリティ障害)
じゃぁ、自己愛が激しいとどうなっちゃうのかしら・・・。
次に自己愛が過度になるとどうなるか見ていきましょう。
過度な自己愛は、自己中心的で他者への配慮が欠ける態度を指します。いわゆる自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder)として知られています。
たとえば
・共感の欠如: 他人の感情やニーズを理解しようとせず、自分の要求を優先する。自分の目的のために他人を利用することもある。
・賞賛を求める: 常に他人からの賞賛や注目を求め、そのために行動する。他人の評価に過度に依存する。
健康的な自己愛は、幸福で充実した人生を送るために必要ですが、過度な自己愛は人間関係や社会生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
バランスを保つことがとても大切です。
自己愛と自己肯定感、大切なのはバランス
自己愛と自己肯定感。
どちらも健康な心の状態を保つのに大切な要素です。
そして大切なのはそれぞれのバランス。
ここでは、自己愛や自己肯定感が高すぎたり低すぎたりするとどうなるのか見ていきましょう。
バランスが取れた健全な自己愛と自己肯定感
適切な自己評価ができる
健全な自己愛と自己肯定感があれば、自分の長所や短所をバランス良く認識できます。
・短所を気にしすぎない
・長所を過小評価しすぎない
という適度な自己評価ができるのです。
現実的な自己受容
自分らしさを素直に受け入れ、良い面も悪い面も含めて自分自身を現実的に受け入れることができます。
自分を過度に卑下したり、過大に肯定しすぎたりせず、現実的な自己像を持っているのが特徴です。
低すぎるパターン
自己愛や自己肯定感が低すぎると、以下のような傾向が出やすくなります。
・自信がない:自分に自信が持てず、自分の価値や能力に疑問を抱きやすい。成功してもそれを認識できず、他者からの承認を必要以上に求める。
・他者依存:他者からの承認や評価に過度に依存する。自分の判断や意見に自信が持てないため、他人の意見に従いやすくなる。
・対人関係の問題:自分に自信がないため、人間関係で不安を感じやすく、他者との関係が不安定になる。また、自己評価が低いため、他人からの批判や拒絶を過度に恐れる。
・抑うつや不安:日常生活におけるストレスや困難に対処する能力が低下する。
・自己犠牲的行動:自分のニーズや欲求を抑え、他者の要求を優先する傾向が強くなる。これにより自己犠牲的な行動が増え、自分を大切にすることができなくなる。
・達成感の欠如:自分の成し遂げたことや努力に対する達成感を感じることができず、常に不満を抱く。
高すぎるパターン
では逆に、自己愛や自己肯定感が高すぎるパターンをみていきましょう。
自己愛が高すぎる
自己愛が過剰だと、自分の利益や快楽のみを追求し、人間関係をうまく築けなくなります。
相手の気持ちを考えず、自分本位の行動をとりがちで、人付き合いでトラブルを起こしかねません。
先に上げた「自己愛性人格障害」も自己愛が高すぎるパターンです。
自己肯定感が高すぎる
自己肯定感って、高ければ高い方がいいんだと思ってました。
自己肯定感が高すぎると、自分を過大評価し、他人を軽視する傾向が強まります。
以下のような傾向が出やすくなります。
・傲慢になる:他人を見下す態度を取り、自分が常に正しいと信じる。他者の意見や感情を尊重せず、自分の意見を押し通そうとする。
・共感しない:他人の感情やニーズに対する関心が薄れ、自分中心の考え方に陥る。他者の立場や感情を理解する能力が低下する。
・過剰な自己主張:常に自分を中心に考え、他人の意見を聞かず、自分の意見や要求を強く主張する。
・失敗の認識不足:失敗やミスを認めることが難しく、他人のせいにしたり問題を無視する傾向がある。自分の過ちを認めないため、成長や改善が困難になる。
・対人関係の摩擦:他人を尊重しない態度や行動が原因で、友人や同僚との関係が悪化することがある。孤立したり、対人関係においてトラブルが生じやすくなる。
・過度な競争心:他人と競争することに過剰にこだわり、常に自分が一番でなければ気が済まない。これによりストレスや対立が生じやすくなる。
健全な自己愛と自己肯定感の関係
自己愛と自己肯定感は密接な関係にあり、相互に影響し合います。
適度な自己愛があれば自己肯定感も高まり、自己肯定感が高ければさらに健全な自己愛が育ちます。
このように、両者は好循環を生み出していきます。
まとめ
自己愛と自己肯定感は少し異なりますが、密接に関連しているものです。
自己愛は自分を大切にし、愛することに焦点を当て、
自己肯定感は自分の能力や価値をどのように評価し、信頼するかに焦点を当てています。
どちらも健康な心の状態を保つのに大切な要素です。
そして最も大切なのは、そのバランス。
どちらも、多すぎても少なすぎてもうまく行かないんですね。
今の自分はどうかな?
バランスが取れているかな?
とぜひ振り返ってみてくださいね。